原価計算の目的

 

 「原価計算基準」には、原価計算の主たる目的として、次の5つが挙げられている。

1. 財務諸表の作成

2. 価格計算

3. 原価管理

4. 予算編成ならびに予算統制

5. 経営の基本計画の設定

 

1. 財務諸表の作成

 「企業の出資者、債権者、経営者等のために、過去の一定期間における損益ならびに期末における財政状態を財務諸表に表示するために必要な真実の原価を集計すること。」

 つまり、原価計算によって、売上原価及び材料、仕掛品、製品等の棚卸資産を算定することによって、損益計算書、貸借対照表の作成に役立てるのである。

 

2. 価格計算

 「価格計算に必要な原価資料を提供すること。」

 ただし、ここでいう価格計算とは、政府、公企業等への納入価格の決定のために行う計算であって、私企業が業務的意思決定として行う価格決定のための計算ではない。そのため、本来、完全競争の市場で活動する私企業に対する適正ではない目的観といわれる。

 

3. 原価管理

 「経営管理者の各階層に対して、原価管理に必要な原価資料を提供すること。」

 また、「原価計算基準」は原価管理について以下のように規定している。

 「原価管理とは、原価の標準を設定してこれを指示し、原価の実際の発生額を計算記録し、これを標準と比較して、その差異の原因を分析し、これに関する資料を経営管理者に報告し、原価能率を増進する措置を講ずることをいう。」

 この規定は原価管理目的のうち、原価統制目的を中心としているといえる。つまり「原価計算基準」は、企画・設計段階を中心として、関連部署の総意を集計し、VE等、管理工学的手法を利用することによって行う原価自体の引き下げは意図していない。

 

4. 予算編成ならびに予算統制

 「予算の編成ならびに予算統制のために必要な原価資料を提供すること。」

 また、「原価計算基準」は予算について以下のように規定している。

 「予算とは、予算期間における企業の各業務分野の具体的な計画を貨幣的に表示し、これを総合編成したものをいい、予算期間における企業の利益目標を指示し、各業務分野の諸活動を調整し、企業全般にわたる総合的管理の要具となるものである。」

 また、「原価計算基準」は、予算編成の過程には、製品組合せの決定、部品を自製するか外注するかの決定等の業務的意思決定も含まれると規定している。

 

5. 経営の基本計画の設定

 「経営の基本計画を設定するに当たり、これに必要な原価情報を提供すること。」

 また、「原価計算基準」は基本計画について以下のように規定している。

 「基本計画とは、経済の動態的変化に適応して、経営の給付目的たる製品、経営立地、生産設備等経営構造に関する基本的事項について、経営意思を決定し、経営構造を合理的に組成することをいい、随時的に行われる決定である。」

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