総合原価計算による仕損及び減損の処理
► 仕損及び減損の意義
1. 仕損の意義
仕損とは、加工品が一定の品質や規格に合わないことにより不合格品が発生することをいい、その不合格品を仕損品という。
さらに仕損の発生によって生じた損失を仕損費といい、仕損品原価から仕損品評価額を控除した金額をいう。
2. 減損の意義
減損とは、投入した原材料のうち、加工中に蒸発、粉散、ガス化、煙化等によって減少した損耗分のことをいう。
3. 仕損と減損の共通点
仕損と減損とは実体が存在するかどうかという違いがあるだけで、投入原材料が良品にならないという本質は同じである。したがって、通常は仕損費・減損費は同じように処理される。
なお、仕損と減損を総称して歩減とよぶことがある。
► 仕損・減損の処理の全体像
総合原価計算における仕損及び減損の処理は、以下のような判断や処理の組合せにより展開されることになる。
(1) 仕損・減損の種類
・ 正常仕損
・ 正常減損
・ 異常仕損
・ 異常減損
(2) 負担関係
・ 両者負担
・ 完成品のみ負担
(3) 計算方法
・ 度外視法
・ 非度外視法
1. 正常発生額と異常発生額の処理
仕損・減損は、製品を製造するために避けられないと考えられる正常仕損・正常減損と、異常な原因から生ずる異常仕損・異常減損とに区分される。正常仕損費・正常減損費は、良品の製造に必要な原価として発生するので良品に負担させる。他方、異常仕損費・異常減損費は、良品の製造には関係ないと考えられるので非原価項目となる。
2. 正常仕損費・正常減損費の負担関係
正常仕損費・正常減損費は、良品である完成品と月末仕掛品に負担させることになるが、どのように負担させるかについては次の2つの方法がある。
・ 完成品と月末仕掛品の両者に負担させる。
・ 完成品のみに負担させ、月末仕掛品には負担させない。
3. 正常仕損費・正常減損費の計算方法
正常仕損費・正常減損費を良品に負担させる場合の計算方法としては、仕損費・減損費を分離把握するかどうかという観点から、度外視法と非度外視法に分けられる。
(1) 度外視法・・・仕損費・減損費を特別に計算しないで、自動的にこれを良品に負担させる方法。
(2) 非度外視法・・・仕損費・減損費をいったん分離計算し、その後に改めて良品に負担させる方法。
► 正常仕損費・正常減損費の負担関係
1. 仕損・減損が工程の一定点で発生する場合
正常仕損費・正常減損費は、完成品・月末仕掛品の両者に負担させる方法と、完成品のみに負担させる方法の2通りに分けることができる。負担先をどのようにするかは、仕損・減損の発生点と月末仕掛品の加工進捗度によって決定されるのが通常である。
(1) 正常仕損・減損発生点が月末仕掛品進捗度以下の場合=両者負担
仕損の発生点が月末仕掛品の進捗度よりも前にある場合、月末仕掛品は仕損の発生点を通過している。すなわち、月末仕掛品は仕損が発生した後の状態にあるから、仕損との関係では月末仕掛品も完成品と同様であって、完成品と同じように仕損費を負担しなければならない。
つまり、仕損の発生点を仕損費の発生点と考え、仕損発生点通過している月末仕掛品と完成品の両方に仕損費を負担させると考えるのである。
(2) 正常仕損・減損発生点が月末仕掛品進捗度より大きい場合=完成品のみ負担
仕損の発生点が月末仕掛品の進捗度よりも後にある場合、月末仕掛品からは、まだ仕損が発生していない状況といえる。そのため、月末仕掛品には仕損費を負担させず、完成品のみに仕損費を負担させることになると考える。
2. 仕損・減損が工程を通じて平均的に発生する場合=両者負担
仕損・減損が、工程を通じて平均的に発生する場合、完成品も月末仕掛品も正常仕損・減損発生点を通過しているといえるため、正常仕損・減損費は、完成品と月末仕掛品の両者が負担すると考える。
► 度外視法による処理方法
1. 度外視法の意義
度外視法とは、仕損・減損費を特別に計算しないで、自動的にこれを完成品と月末仕掛品に負担させる方法であり、「原価計算基準」において原則とされている方法である。
2. 度外視法の種類
度外視法では、両者負担か完成品のみ負担かの選択について、通常次のような方法に従って決定する。
(1) 進捗度を考慮した度外視法
・ 正常仕損・減損発生点が月末仕掛品進捗度以下の場合=両者負担
・ 正常仕損・減損発生点が月末仕掛品進捗度より大きい場合=完成品のみ負担
・ 工程を通じて平均的に発生する場合=両者負担
この方法は、仕損・減損の発生点を通過している良品は仕損・減損の発生原因になっているといえるため、仕損・減損の発生点を通過している良品には仕損費・減損費を負担させ、仕損・減損の発生点を通過していない良品には仕損費・減損費を負担させないという考え方を論拠としている。
(2) 簡便法としての度外視法
これは、仕損・減損が工程の始点又は途中点で発生した場合には完成品と月末仕掛品の両者に負担させ、工程の終点で発生した場合には完成品のみに負担させるという方法である。
3. 度外視法の計算手続
仕損・減損が生じた場合の計算手続は、評価額の有無及び負担関係により次のように区分できる。ここでは、月末仕掛品の計算は平均法、先入先出法によるものとし、それぞれの場合について説明する。
(1) 評価額なし・両者負担の場合
・ 平均法
仕損・減損量は計算式の分母からはずして、月末仕掛品原価を計算する。これにより、月末仕掛品は自動的に仕損費・減損費を負担した割高な単価で計算されることになる。
・ 先入先出法
仕損・減損量は計算式の分母からはずして、月末仕掛品原価を計算する。これにより、月末仕掛品は自動的に仕損費・減損費を負担した割高な単価で計算されることになる。
(2) 評価額なし・完成品のみ負担の場合
・ 平均法
完成品のみが仕損費・減損費を負担する場合、仕損・減損量を計算式の分母に含めて、月末仕掛品原価を計算する。これにより、月末仕掛品は自動的に正常仕損費・減損費を負担しない単価で計算される。
・ 先入先出法
完成品のみが仕損費・減損費を負担する場合、仕損・減損量は計算式の分母に含めて、月末仕掛品原価を計算する。これにより、月末仕掛品は自動的に正常減損費を負担しない単価で計算される。
► 非度外視法による処理方法
1. 非度外視法の意義
非度外視法とは、仕損費・減損費をいったん抜き出して計算し、その後改めて完成品と月末仕掛品に負担させる方法である。ただし、月末仕掛品に負担させるかどうかは、仕損費・減損費の発生点と月末仕掛品の進捗度との関係で判定する。
2. 非度外視法の利点
度外視法に対し、非度外視法を利用した場合には次のような利点がある。
(1) 仕損費の発生額を把握することができるため、経営管理に有用である。
(2) 仕損費等の合理的な負担先及び負担額を決定することができる。
3. 非度外視法の計算手続
非度外視法では、具体的には次のようなステップで計算を行う。
・ 評価額がない場合
(1) 直接材料費と加工費からいったん仕損・減損を抜き出し、仕損費・減損費を算定する。
(2) 抜き出された仕損費・減損費を改めて完成品と月末仕掛品に負担させる。ただし月末仕掛品に負担させるか否かは、仕損・減損の発生点と月末仕掛品の進捗度との関係で判定する。
・ 評価額がある場合
(1) 直接材料費と加工費からいったん仕損を抜き出し、仕損品原価を算定する。この段階では、仕損品評価額を考慮に入れないで計算する。
(2) 抜き出し計算した仕損品原価から仕損品評価額を控除し、仕損費とする。
(3) 抜き出された仕損費・減損費を改めて完成品と月末仕掛品に負担させる。ただし月末仕掛品に負担させるか否かは、仕損・減損の発生点と月末仕掛品の進捗度との関係で判定する。
4. 仕損・減損が工程の一定点で発生する場合の計算方法
この場合、正常仕損・減損発生点と月末仕掛品進捗度に応じて、両者負担か完成品のみ負担かを決定する。
(1) 正常仕損・減損発生点が月末仕掛品進捗度以下の場合=両者負担
(2) 正常仕損・減損発生点が月末仕掛品進捗度より大きい場合=完成品のみ負担
5. 仕損・減損が工程を通じて平均的に発生する場合の計算方法
正常減損が工程の始点から終点に至るすべての間で平均的に発生すると仮定する場合には、完成品も月末仕掛品も正常減損発生点を通過するので、正常減損費を完成品と月末仕掛品の両者に負担させる。
平均発生の場合、減損の進捗度は50%と考える。これは減損の発生点が工程を通じて平均的に散らばっていると想定するためである。
また、正常減損費を完成品と月末仕掛品に按分する場合には加工費の完成品換算量の比を用いる。これは、正常減損費は加工に応じて発生すると考えられるためである。
6. 安定的発生の場合
(1) 基本的な考え方
減損が工程を通じて安定的に発生している場合、加工が進むにつれて減損が比例的に増加することになる。このような場合には、完成品と月末仕掛品の双方に減損が生じており、また、月初仕掛品からどの程度減損が発生しているのかを把握することも可能である。そこで、減損が工程を通じて安定的に発生している場合には、減損費は完成品と月末仕掛品の両者負担となり、負担割合も厳密に計算される。
► 異常仕損・異常減損の処理方法
1. 意義
仕損や減損が通常の程度を超えて発生した場合や異常な事象を原因として発生した場合、これを異常仕損、異常減損という。その原因には、材料の不良、整備不良や機械の故障、工員の不慣れ、あるいは台風や地震といった天災等があげられる。
2. 異常仕損・異常減損の処理
異常発生額はもともと原価性に欠けるため、良品を製造するためにはその発生が避けられないといった正常仕損、正常減損と区別される。つまり、異常仕損費・異常減損費は原価性が認められず、非原価項目として処理する。
異常発生額の計算は、非度外視法と同様に行えばよいが、計算された異常仕損費や異常減損費は、良品には追加配賦しないことに注意が必要である。
・ 異常仕損費、異常減損費=非原価項目(特別損失又は営業外費用)として扱う
3. 正常仕損・減損と異常仕損・減損の同時発生
これまでは、正常仕損の処理と異常仕損の処理は別個に説明してきた。しかし、正常仕損と異常仕損が同時に発生することも考えられる。
この場合、異常仕損が正常仕損費を負担するかどうかが問題となるが、これについては、次の2つの考え方がある。
・ 異常仕損には、正常仕損費を負担させない方法
・ 発生点の進捗度によって負担関係を決定する方法
(1) 異常仕損には、正常仕損費を負担させない方法
この方法は、原価の正常性概念を重視するものである。正常仕損費が良品を製造するために不可避的に発生する費用であるとする定義からは、良品のみに負担させると考えるのが論理的である。そこで、異常仕損には正常仕損費を負担させない。
(2) 発生点の進捗度によって負担関係を決定する方法
この方法は、正常仕損の発生点と月末仕掛品の加工進捗度及び異常仕損の発生点との関係によって正常仕損費の負担先を決定するものである。
異常仕損であっても、それが単に検査結果において異常と判断されただけであるとすると、異常仕損も正常仕損の発生原因となっている可能性があると考えられる。そこで、異常仕損の発生点が正常仕損の発生点を超えている場合、正常仕損費の一部を異常仕損に負担させるのである。
ただし、異常仕損に算入された分については正常な原価の一部が非原価項目として処理されることになるので、正常な原価は正常な経営活動を通じて回収されるという原則から乖離することになる。